加茂 孝子(かも たかこ)
和紙造形作家
東京都に生まれる
武蔵野美術短期大学工芸科卒業
自然素材の楮(和紙原料)はそれ自体で美しく、しなやかさと強さを兼ね備え、また、それ自身では自立し得ない危うさが私を魅了し続け、想像力と表現の源になっている。
和紙繊維とワイヤーを組み込んだ立体作品は独自の手法のひとつだが、舞台美術の仕事は多くの人とひとつのものを作り上げるという喜びは大きく和紙の可能性を拡げている。
最近の個展
2014 アトリエ展「生きる血」
2016 「・・・そして、生きてゆく」アカイファクトリー
2017 和紙の舞台衣装展 「心をつつむ 体をつつむ」アカイファクトリー
最近の舞台美術
2017「ミレイ リサイタル」飯能市民会館
2017「シモシュ ピアノリサイタル」所沢ミューズ
2018 劇・楽・団「まだです。」入間アミーゴ
2018「ロンサムジョージ」埼玉芸術劇場
和紙特有の毛細管現象を利用したインスタレーション作品「……そして生きてゆく」。
吸い上げられた赤い染料が時間とともに血管のように作品全体に行き渡る。
大学時代ヨット部に入り最初に先輩から教わった「もやい結び」。
不思議で綺麗な結び。
戦後最大の公害病の水俣病。その患者や支援者達が苦悩の末に導き出した思想の「もやい」。昨年初めて水俣を訪ずれ、水俣をテーマに描かれた絵画展、資料館、特別展を見て回った。不条理としか言い様のないな国や政府の対応や更に差別や中傷に苦しみ、問題が複雑に絡み合ってしまったという事を改めて思い知った。
福島も全く同じ事が繰り返されている。
しかし私は何も出来ない、しないという後ろめたさの中、計り知れない悲しみを想像し作品を制作した2011年「漆黒の闇」2012年の「祈りの言葉」の作品。
その後あるきっかけから生命の証しである血の「赤」をテーマに作品を制作するようになる。
「赤い血が全身を巡り生命の営みを一日、一日と重ねる。人は運命の出会いを経てこの世に生まれ、死を迎えるまで生き抜かなければならない。到底計り知れない不条理や怒りを祈りに変え、、、」
そんな思いの作品とあなたの体に流れる血が共振出来たらと思う。そして、私が「もやい結び」を先輩から教えられたように、この展覧会が「もやい」を人から人へと伝承し、福島を思う美しい結び目が出来ればと願う。
加茂孝子
ミュージシャンや舞台俳優にも和紙製の衣装を提供している。写真はシンガー「mirei」のための舞台衣装