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片桐 功敬(かたぎりあつのぶ)

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1973年大阪生まれ。華道家。

 

1997年、24歳で大阪府堺市に続くいけなば流派、花道みささぎ流の家元を襲名。

 

片桐のいけなばのスタイルは伝統から現代美術的なアプローチまで幅広く異分野の作家とのコラボレーションも多数。

 

小さな野草から、長年のテーマでもある桜を用いた大規模ないけばな作品まで、その作品群はいけばなが源流として持つ「アニミズム」的な側面を掘り下げ、花を通して空間を生み出している。

 

2013年より文化庁助成事業「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」の招聘作家として福島県南相馬市に長期滞在して多数のいけばな作品を制作。

 

その成果が「Sacrifice~未来に捧ぐ、再生のいけばな~」 (青幻舎刊)として上梓された。

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2013年、

 

震災から三年目の夏に「みずあおい」という花が福島県南相馬市沿岸部の津波の跡地に咲き乱れるという現象がおこった。

 

 

この花は環境省の絶滅危惧2類に指定された希少な在来植物。人が干拓した水辺を追われて消えた花が、津波をきっかけに息を吹き返したのだった。人に追われ消え、人が消えると咲く。その無垢な青い花の色には非情な自然の摂理が宿っている。

 

この花をいけてみないか?

 

という誘いが、それから今まで続く、震災後の福島を巡る長い旅の契機だった。実に沢山の花をいけた。津波の跡地に、廃墟に、ゴーストタウンの片隅に、放射性物質を撒き散らした原発が望める丘の上に、、、花たちは当たり前のように咲いていた。

 

あるべきものが損なわれてしまったという悲しみと、それでもいのちは続いていくという希望。美しい花は震災後に生きるものの心象のように感じられた。

 

振り返るとその行為は、汚された大地と損なわれた命への私なりの祈りだったのかも知れないと思う。

 

東日本大震災から6年目の春。

 

 

完全な復興からはまだほど遠い福島にまた花が咲く。前しか見ない者の視線にその花は入らない。声も聞こえない。願わくば、しばし歩みを止めて足下に咲く花を見て、耳を傾けて欲しい。

                              (片桐功敦 展「SACRIFICE」〜福島第一原発30km圏内の花たちが語る言葉〜

                               Hikarie Contemporary Art Eye vol.6 小山登美夫監修 冒頭文より転載)

 

 

                      華道家・片桐功敦

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​原発が見える大熊町での制作風景

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